新型コロナウイルスの蔓延による世界的な混乱、これはもしかしたらスペイン風邪以来ではないだろうか。患者数は毎年のインフルエンザの方が多いが、強毒型であっても局地的な流行(エピデミック)で終わっており、封じ込めに成功していた。
これまでインフルエンザではあるが、類似したウイルスの検出研究を行っている(*)ので、簡単に私見をまとめたい。ただし自分は医師免許を持っていないので、公的に述べる資格はそもそもないし、正確ではないかもしれないので、覚書き程度にしておく。
(1−1)法令を遵守したまま対応しようとしている
国は今回の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症を指定感染症に指定した(1月28日、31日改定)。これは簡単にいうと、検体を採取時に防護服を着たり、陽性がでたら隔離しないといけない、などの対応が必要ということである。たとえ軽症者がほとんどだとしても、陽性者が増えると医療崩壊するのは、容易に計算できると思う。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00088.html
法令を超えて、柔軟に対応することも可能だったと思うが、首相やその周囲がそのような提案をしなかったのだろう。個人情報や公衆衛生に関わる現在の種々の法令を守る、これが前提のようである。
(1−2)診断にはPCRが必須なのか?
PCRの結果がすべてであるような報道があるが、医療現場は本当にPCRだけで診断しているのだろうか。たとえばインフルエンザの場合、インフルエンザの似た症状があって家族などに患者がいたら、医者は迅速診断キットを使うことなく患者だと認めて薬を処方するだろう。
・陰性が出た患者は、コロナではないと判断するのは早計である。感染者がPCRで陽性と判定できる精度は50%〜90%程度である(感度)。つまり、最大で半分の偽陰性の感染者がいる。一回の陰性結果のみで、陰性だから感染していない、と判断するのは早計である。
・逆に、陽性が出た患者はどうか。一般的には遺伝子がないと増えることはほとんどないため、偽陽性の確率は低い。例えば99%の精度で陰性結果が正確であるとする(特異度)。他の検査キット(70%〜90%程度)に比較して素晴らしいのは確かだが、時間がかかり必要な設備も人的リソースも大きい。
まとめると、陽性が出た場合には、「ほぼ」感染者と考えてよいが(ただしどの程度かは次に計算する)、陰性の場合には症状をみてもう一度PCRを行うか、総合的に判断すべきだと思われる。
*コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じでRNAをもち、膜エンベロープのあるウイルス(=エタノールで死滅する)という意味では、同じ仲間である。ただしRNAが(+)なので、RNA(–)のインフルエンザウイルスと異なる。
(20200513)